2018年3月26日月曜日

【やけくそ】『聖なる鹿殺し』が難しすぎたので、クソシュールなシーンをランキング形式でまとめました。


(最近twitterでは自撮りがドイヒーと話題に)

なぜかヨルゴス・ランティモスの作品に出ると性格・ビジュアルともに全く冴えない主人公を演じさせられるコリン・ファレルさん。

前作『ロブスター』でも、期間内にパートナーを見つけないといけないのに、開始早々「あ、こいつ絶対動物になるわ」と思わせるあたりは流石でした。

今作では医者で良い家に住んで、綺麗な奥さんも子供もいて珍しく順風満々なのですが、そこはランティモス作品。医者でその髭はどうなんだとツッコミたくてたまらない上に、ストーリーが進むにつれて、立派なのは髭だけだったとわかっていくブラックユーモア感は最高です。

肝心のストーリーはというと全く分からなくエウリピデス?とか何とか神話をベースにとか言われましても・・・という感じ。

映画館を出た後も考えれば考えるほど面倒くさくなってしまったので、ここは一度作中で最高に笑えた(実際はそんな空気ではないので主人公同様仏頂面でしたが)シーンをランキングでまとめました。(以下ネタバレあり)




  • 9位【陰毛を捜すスティーヴン】
歩けず食事も摂れなくなったのに、回復の見込みがまったくない現状に苛立つスティーヴンが、なんかよくわかんないたとえ話をしながら、子供を治すにはなんかの動物(覚えてなさ過ぎ・・・)と処女の陰毛がいるんだよっ!!!!と何故かこのシーンだけマジギレします。

処女の陰毛探したければ、娘の部屋にでも行けばいいのに、何故かキッチンの引き出しや棚を、中身を床にぶちまけながら探す髭面はなかなかにシュールです。

この時のニコール・キッドマン演じるアナの表情は、正直バリー・コーガンより怖かったです。


  • 8位【子供のどちらを生贄にするかを、学校の担任に委ねるスティーヴン】
聖なる鹿殺しとは、ある男が森でうっかり聖なる鹿を狩ってしまい、その代償として自分の娘を生贄にささげるという神話が元になっていると耳にしました(でも原題は邦題と違うなど色々聴きますが、いかんせん私は英語力中1未満なのでその辺はスル~)が、スティーヴンには子供がふたり。

どっちを生贄に捧げるか、よりどりみどりゆえに自分では決めかねるので、彼が向かった先は子供達が通う学校。

学校の先生に息子と娘はどっちが優秀ですか。先生的に。と聞くスティーヴン。
当然先生は質問の意図が分からず困り顔。まさか自分ではなく子供を生贄にしといて、何かあったら先生が言ったんすよ!と責任逃れをするつもりだったのでしょうか。先生も良い迷惑。


  • 7位【マーティンのスパゲティ捕食シーン】
(因みに来場者プレゼントは、このシーンをプリントしたステッカーだったそうです。めっちゃ欲しい・・・)

世界中の衣料用洗剤会社が歓喜しそうなシーン。

なぜか真っ白なTシャツを着たまま、ミートスパをきったねぇ食い方をします。
ここでアナはマーティンに、子供達を歩けるように説得しに来たのに、マーティンはクチャラーよろしく、ばっちい手つきでもぐもぐとミートスパを食べる始末。
結構早い段階でTシャツにシミをつけているので、マーティンの独白で重要なワードが隠れてそうなのに、またシミがつくのではないかと気になって、全く話が耳に入ってきません。
気付いたときには「少なくとも、正義には近づいているはずだ」と何故かジャスティスの話になっていました。

  • 4位【ロシアンルーレットで明らかに一旦ボブの前で止まった時点で、もうロシアンルーレットじゃなくない?】
本編参照。

  • 4位【ニコール・キッドマンフルヌードで誘惑するも、旦那に全くあえてにされない】
本編参照。

  • 4位【キム処女をマーティンに捧げようとするも、マーティン何もせず帰宅する。】
本編参照。


  • 3位【マーティンにわき毛を見せろとせがまれるスティーヴン】



ボブがマーティンに、パパはマーティンの3倍はわき毛ボーボーだよと、盛りに盛って吹聴したせいで、マーティンは仮病を使って病院にいき、さらにわき毛を見せろとスティーヴンにせがみます。

スティーヴンももう大人なので、やっぱりちょっと恥ずかしいのか、もじもじしながらわき毛を見せるも「3倍はないわ」と一蹴される始末。
そのときのスティーヴンのなんともいえない切なげな表情(実際は無表情ですが元が元だけに)がやばいです。


  • 2位【マーティンに腕時計をプレゼントするも、すぐに革ベルトに変えられるスティーヴン】
本編冒頭で、スティーヴンがマーティンに腕時計をプレゼントするも、マーティンは「金属じゃなくて革のベルトがいいから変えていい?」と無神経にも程があることを言い出します。

スティーヴンも大人なので、止めはしまえせんが「でも金属のほうがいいよマジで」と、どうしても革にして欲しくない気持ちが前のめりになっています。

結局腕時計はわずか数日(下手すれば翌日?)で革ベルトに変えられるという、スティーヴン一家に次ぐ悲劇的展開に。

そのときのスティーヴンのなんともいえない切なげな表情(実際は無表情ですが元が元だけに)がやばいです。

因みに時計は同僚が買ったお店で買ったのですが、その同僚も革ベルトというアウェイっぷり。しかも本編では水中のシーンなんて全くないのに、何故か水深何メートルまで防水かを気にするスティーヴン・・・


  • 1位【息子にとんでもないことをカミングアウトするスティーヴン】


当初ボブが歩けなくなったのは仮病だと信じたかったスティーヴンは、何とかして息子に仮病だと言って欲しい為に、秘密を言い合うゲームをします。
より凄い秘密を言ったら勝ちというルールで、スティーヴンは
「俺はお前と同じ年のころ初めてオ○ニーを覚えた。そのとき出てきた精○の量が少ないと思った俺は、酔って寝ていた親父のものをしごいてみた。すると大量に○子が出てきて、俺は逃げ出した。さあお前の秘密は?」
「特にないよ」
「」
「マジで」
「」

私だったらこんな親父とか絶対ぐれる。


  • おまけ


キムのエリー・ゴールディング 『Burn』がそんなに上手くない。

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こんなに笑えるシーンがあるのに、いかんせん劇場は一貫して静まり返っていたので辛かったです・・・
でももう一回見たいなあ。スティーヴンのオナニー武勇伝のインパクト強すぎて、ほかの事殆ど忘れたし。







またおまけ

偉そうなことを言った私の歌唱力参考動画

2018年3月20日火曜日

アカデミー受賞作『イカロス』を見たら予想の斜め上でヤバめな展開が待っていました。



本年度アカデミー賞ドキュメンタリー部門受賞作『イカロス』

ドキュメンタリー部門ではよくNetflixオリジナル作品がノミネートされることがあり、今作以外にも『ストロング・アイランド』という、実兄を殺された監督によりその事件の詳細と人種差別問題が描かれるという骨太な作品もノミネートされています。

肝心の『イカロス』がどんな内容かというと・・・



監督でアマチュアロードレーサーのブライアンが、かねてから憧れていたアマチュアロードレースに参加したけど、上位の奴絶対ドーピングしてるから、俺もしたってバレへんバレへん。みたいな動機からスタートする今作。

要するにドーピング検査をいかに簡単に欺けるかを、監督が文字通り体を張って証明するという、若干マクドナルドのスーパーサイズを3食毎日食ったらどうなるかを実証した『スーパーサイズミー』のドーピング版的ドキュメンタリー。


(この数十秒後、ゲロリンちょします。あとネタバレすると、夜にあそこの元気がなくなるそうなので、まだまだお盛んな方は要注意。)




ブライアンはサポートして、ロシア反ドーピング機関所長のグリゴリー・ロドチェンコフという、大変ひょうきんなおっさんに協力を仰いで、ドーピングプログラムをはじめ、管理も徹底して行うことに。

このあたりはまるでランス・アームストロングの再現でも見ているかのような生々しいリアリティを見せ付けられます。

ランス・アームストロングさんといえば、20代でガンを患うも不屈の精神で克服し、ロードレースに復帰するというそれだけでも凄い人なのに、勝つために手段を選ばなさ過ぎたゆえに、まるで息をするかのごとくドーピングするようになってしまった選手。

私は自転車なんて通勤手段程度にしか考えていないのですが、興味のある人はスティーヴン・フリアーズ監督の『疑惑のチャンピオン』を見ると、より一層、ブライアンがなぜここまでしてアンチドーピングを欺けるのか試したいのかがよく分かります。


(全くの余談ですが、ランスさんは結構自転車業界?で、今なお忌み嫌われる存在らしく、
おかげさまでこの映画のプロモーションに協力してくれる企業を探すのに、かなり苦労したんだとか・・・)

結論からすると、作中のブライアンやグリゴリーのへらへらした感じからすると、アンチドーピングを欺くなんて目をつぶってでもできそうな勢いだった。のですが・・・




この撮影の真っ只中、2014年ソチオリンピックにて、ロシアによる国家主導のでドーピングプログラムが実施されたことが、ドイツの公共放送によって報じられます。

そしてそのプログラムに関わった人物として、グリゴリーの名が挙がってしまったことで、事態は誰も想像していなかった展開へ転がっていきます。

いかんせんこのグリゴリーは、ロシア選手がパフォーマンスを向上させる薬物を検出することなく使用するのを助けるために、独自のシステムをロシアに持っていたのです。もう誰がどう見てもクロ。
「一緒にアンチドーピング騙そうねぇ~^^」といったゆるゆるな雰囲気はもうどこにもありません。

(おっさん2人が、どのおしっこをサンプルとして提出するか相談している様子。ここにミヒャエル・ハネケ監督がいたら大はしゃぎしそう


グリゴリーにもはや選択の余地はなく、ロシアに居続ければ間違いなく逮捕されるので、彼は形勢逆転を狙い、自らの地位や生活をなげうって、この事件の黒幕がスポーツ大臣のムトコや、果てはプーチン大統領容認の下行っていたと暴露することに。



グリゴリーは暗殺を逃れるために、ブライアンの助け(アマチュア自転車選手です)を借り、当時スノーデンの弁護をしたという敏腕弁護士を雇い、アメリカに亡命。
グリゴリーの暴露を聞いたWADA(世界アンチ・ドーピング機構)は改めて調査を実施します。
そしてロシア政府が、組織的なドーピングに関与していることを突きつけるのです。

ちなみにロシアがドーピングによってどれほどの成果を得たかを詳しく記載したサイトがコチラ(ヤバ過ぎ笑えない)

いかんせん、グリゴリーの身に危険がリアルガチで迫っていると痛感させられるのは、同じく組織ぐるみのドーピングに関与したとされる彼の友人の一人が、不審な死を遂げたと聞いたとき。

もはやあの時のきゃっきゃしていたグリゴリーの姿はどこにもありません。

彼は結局アメリカに亡命し、証人保護下のもと、ロシアに残してきた家族や愛犬に会えぬまま今も生活しているそうです。

肝心の彼の暴露も、政府の圧力でねじ伏せられ、映画公開時は、18年の平昌五輪にもロシアは普通に参加する予定だと記されていました。(でも実際は国を代表してではなく、個人としての出場しか認められないんでしたっけ?)





  • そもそも何がそんなに怖いのか
今作で一番玉ひゅんするのが、そんな暗殺なんか起こるわけないでしょと思ってたらガチで2人くらいドーピング報道後不審死を遂げているという事実。

もうこのあたりから、グリゴリーはまるで別人格になったかのようにシリアスになっていきます。

映画を見終わったときも感じたのですが、「てか何でこんなことになったんだっけ・・・」と一回思考が停止し、やがて「あ、アンチドーピング騙せるかやってみた的な内容だった!」と思い出したときも背筋がゾッとしました。まるで映画みたい(?)な展開です。

アンチドーピング余裕で騙せると思っていたら、まさかプーチン大統領に狙われる羽目になるとは・・・
さながら子供が火遊びしていたら、知らない人の家に火が移っちゃった・・・くらい監督とグリゴリーの表情が死んでいくのでした。



(既に堅気とは思えないオーラ)
  • ムトコめっちゃ怖い
組織ドーピングに関与したとされるムトコスポーツ大臣。
自分の命がヤバす・・・と悟ったグリゴリーは、ブライアンにどれだけ俺が今ばいやーなのかをムトコ大臣の名を出して、細かく説明してくれます。

「いいか、あの大臣は都合の悪い奴を消すことなんて、書類を提出するのと同じくらい簡単にやってのけるんだ。「そういやあのグレゴリーとか言う奴は、結構年配だろうし、疲れているだろう?明日の記事で彼の死亡記事を用意しておくといい」てな具合にな・・・」

スポーツ大臣めっちゃ怖っ。
リアルに『イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男』を想像してしまいました・・・
あんなノリノリな曲にあわせて暗殺されたらたまりませんが・・・

  • 結論
軽い気持ちで火遊びは危険・・・



2018年3月14日水曜日

Netflix『アナイアレイション 全滅領域』を原作と比較してみる



3月12日からNetflixで配信された『アナイアレイション 全滅領域』
もともとは劇場公開が予定されていたものの、監督とプロデューサーの結末に対する意見がかみ合わず、パラマウント映画なのに劇場公開が中国と北米だけになったという異色?作・・・

個人的にはアレックス・ガーランド監督の前作『エクス・マキナ』が凄い辺鄙なところのシネコンでしか上映してくれなかったので、そんな風にまたなるくらいなら、その他の国は配信対応というのはある意味神対応だと思っています・・・

基本我慢が大の苦手な私は、劇場公開が決まる(決まってはないか・・・)前から原作小説を張り切って三部作全部読んだのですが、映画の脚本が上がった時はまだ1部の『全滅領域』しか出版されていなかったそうで、映画はこれで完結だそうです。私の努力とは。

そんなわけでやはり原作とはいろいろ設定とか結末が異なっているので、簡単にまとめてみました。

以下映画、原作共にネタバレありです。
















因みに原作では浮気してません。

  • 原作では、ラストがはっきりしている。
映画ではレナの夫・ケインの一言「きみはレナか?」という発言を気に、観客は一気にレナがオリジナルなのか、目の前にいるケインのようにコピーなのか分からなくなり、そのまま映画は終わります。

一方の原作では、レナ(正確には原作は固有名詞がなく、生物学者とだけ表記されます)は<エリアX>に入ってわりと早い段階で、体内に「煌き」なるもの(おそらく映画で言う「シマー」は個々から来ている?)を取り込み、調査の過程で自分の体に異変が起きていくのを実感します。

最終的にレナは、映画だと玉虫色のエイリアンと対峙しますが、原作では彼女もケイン同様コピーが生まれ、オリジナルのほうはというと、映画で言うクマのようなクリーチャーとなって、続編で<エリアX>に戻ったコピー・レナと対峙します。
<エリアX>内では、オリジナルは異形の存在に変化させられ、コピーが生まれます。


(「たす・・・けて・・・」)
  • クマ=シェパード
ということは、あのクマのクリーチャーが、なぜ襲ったシェパードの声で「たすけて」と鳴いたのかというと、レナが見つけた遺体はシェパードのクローンという風に考えることもできます。

実際あんな凶暴なクリーチャーに襲われたらもっとズタズタになってもおかしくないのに、見つかったシェパードは鼻から青汁みたいなものを出しているだけ・・・

しかし今作では、原作ほどオリジナルが異形の存在になることを示唆していないので、
突然ふらふらとどっか行ったラデクが言うプリズム現象?によって、彼女の意識がクマに宿った可能性もあります。(でもそうなると、過去の調査隊が残した、腸?の動く隊員の説明がつかなくなる気も・・・)

なお原作では人の目をしたイルカが登場するなど、ちょっとあからさまな奴もちらほら登場します。


(まだ色々情報が明らかになる前のメインビジュアル。よく見たらサブキャラ・・・)
  • 原作だと、むしろヴェントレスの過去のほうが明らかになる。
しかしそれは第3部の「世界受容」から。映画版で明らかにするのは不可能です。
そんなヴェントレスは、映画にも登場する灯台。その灯台主と幼い頃接していたという過去があります。
映画に登場する灯台は、昔怪しい連中が弄繰りまわして、灯台主が異形のものに変形したかのような結末を迎えます。
そんな過去を持っていたゆえ、ヴェントレスは「サザーン・リーチ」の局長として就任したのです。

因みに原作では(たぶん)コピーのヴェントレスが、<エリアX>の境界を広げながら「サザーン・リーチ」にやってくるという、はた迷惑なことをしでかします。(つまり映画のようにレナが帰還したからと行って、<エリアX>は消滅しない)


(「たす・・・けて・・・」)
  • <エリアX>の発生原因
原作も映画も灯台を元に発生している点は同じですが、映画は隕石の落下。原作は続編で、灯台主の目を盗んで怪しい連中が、光源に何か細工をしているのが明らかになります。
その連中もどこかエイリアンっぽい描写があるのですが、彼らがどうやって地球に来たかは不明です・・・

あとは設定とか、細かい点をあげるとキリがないのですが、レナの元軍人は映画オリジナルだし、原作ではレナが調査隊に化せられた日誌をつけており、その日誌=小説「全滅領域」と言った体だったり、その日誌が一体過去にどれだけの調査隊が派遣されたんだ・・・と言いたくなるようなほど大量に<エリアX>内で見つかったり・・・etc

(ださい)

個人的には終わり方が『エクス・マキナ』っぽくて好きでした。
もしレナがクローン(エイリアン)だとしたら、つがいができたわけですから、そりゃ<エリアX>なんてもういらないよね・・・と考えるとゾッとします。

こう見終わってからジワジワとくる感じもたまりません・・・ぐわーっと絶望感が押し寄せてくるワケではなく、ひたひたと漬け置きされる感じと言いますか・・・

正直映画と原作は大まかなストーリー以外かなり別物のようになっているので、ぶっちゃけ第1部だけ読んでもいいような気がしてきました・・・第2部とかヴェントレスの代わりに来た冴えない局長の話だし・・・




しかしこの映画を見た後に、ナタリー・ポートマンが出演しているディオールの香水のCM見ると一段とシュール。私も証明して欲しい(いろんな意味で)。

2018年3月9日金曜日

『プッシャー』3部作をゴリゴリの犯罪スリラーと誤解している人を正しい認識に導くブログ

(まるで聞いていないゴズりん)

ニコラス・ウィンディング・レフン監督といえば、『ドライヴ』で最高にクールな演出とストーリー(脚本は別の人が担当していますが・・・)で一気にファンを獲得し、次作『オンリー・ゴッド』では自分で脚本を担当した結果とんでもない賛否両論の渦に巻き込まれ、さらに次の『ネオン・デーモン』では「レフンよ、どこへ行く」と言わしめるまたも賛否の結果だけならず、エルたんファンらを地獄の底へ突き落とすような展開が話題を呼びました。

しかし監督の『ドライヴ』以降の過去作も注目されるようになり、『オンリー・ゴッド』に北欧テイストを盛り込んだような『ヴァルハラ・ライジング』や、トム・ハーディーが全裸で喧嘩するだけ(褒め言葉)の『ブロンソン』など、ヴァイオレンスな印象が目立つ作品が勢ぞろいしています。

(3作見て、すごくいいキャッチコピーだと思いました)

そんな中でも、借金を抱えた監督を復活に導いた3部作『プッシャー』は意外にもレフン監督作の中でもとっつきやすく、笑える場面さえ散見しているので、まだ監督をよく知らないor知りたい人にはまず見て欲しいとも言える3部作なのです。

取引に失敗してボスから預かった麻薬を紛失してしまった麻薬密売人(プッシャー)のフランクが、警察とボスの双方から追われる身となり、絶体絶命のなかで苦闘する姿を描いたアクションサスペンス。(映画.comより)

(全くRespectできないワンシーン)

こうやって見ると大層ハードな作品のように見えますが、実際の主人公が間抜けの極みみたいな奴で、相棒であるフランク(マッツ・ミケルセン)も地方都市のDQNばりに態度はでかいがおつむは弱いという徹底っぷり。(おまけに後頭部に“Respect“と書かれているタトゥーが凄くじわじわきます)

密売人とはいえ、仕事意識をしっかり持っていればこんなことにはならんだろうと言いたくなるほど、何をするにもテキトーなので、あれよあれよと窮地にはまっていく様はもはやシュールです。

『プッシャー』には全編通して、そんなシュールな場面がいくつかあり、ついついじわってしまうのも魅力のひとつ。

(今では想像もつかないようなお馬鹿な役でした・・・)

マッツ・ミケルセンが相棒に回し蹴りを披露したら、足首ひねって取引に支障をきたしたり、
マッツ・ミケルセンが部屋をバットで荒らそうと、手始めにブラウン管テレビの画面をぶっ壊そうとするも、何故か傷ひとつ付ける事ができなかったり、
マッツ、ミケルセンが久々の娑婆で娼婦2人も呼んだのに、全然勃たなかったり、
マッツ・ミケルセンが集団強盗に参加したのに、定員オーバーで一人バスに乗って帰されたりと、あげたらキリがありません。

そんなクソ野郎ばかり(?)なのにどこか憎めない(というか哀れ)な展開が冴え渡っています。

なんなら1,2で麻薬王として君臨していたミロという人物も、3で主人公になると不運と悲壮感にまみれてきます。

個人的には3が一番面白かったので、(『ドライヴ』でも登場したカナヅチを使ったシーンも登場します) 是非全部見て欲しいところです。

(ミロさん)

ミロさんは、よく分からない国の言葉で罵声を浴びせているときが一番笑えます。本人は必死ですが・・・(1のラストでもその様子が伺えます)
あと娘に仕事のことで口出しされる時と、犯行現場の証拠隠滅している時の表情が殆ど一緒なのもじわります。じわりの極みみたいな人です。


(画像は回し蹴りに失敗する少し前のミケルセンさん)

『プッシャー』は極端な例え方をすると、リチャード・リンクレーター監督の『エブリバディ・ウォンツ・サム』に、犯罪スリラーを表面だけコーティングしたみたいな作品です。お下劣な会話とか、殆ど大学生と一緒だし・・・

ほんと、軽い気持ちで見てもらったほうが面白いと思います。3以外はグロ要素もあんまりないし。。。

しかし3はミロが料理好きにも拘らず、食事しながらの視聴は絶対避けたほうがいいです・・・あんなに食事シーンがおいしく見えなくなることも稀・・・

2018年3月7日水曜日

猫の目にも涙・・・



我が家の2匹猫のうち、キジ白のほうは、若干お腹が弱いです。
しかし食欲は旺盛でよく食べるのに対し、ぶちのほうは食に対してあまり貪欲ではないくせに、おなかは丈夫。

おなかの弱い猫は、餌をいいとこのやつに変えてあげると、う○ちも快弁になるとよく耳にするので、グレインフリーという餌に変えました。

猫は穀物の消化ができないのですが、どうしても安価な餌は穀物でかさ増しすることで、その値段で販売することができるというものです。

グレインフリーは穀物を使ってない分、当然お値段は上がります・・・

うちは色々調べた結果、1.5kgで2000円ほどの餌に変えました。(前はピュリナワンという、アマゾンで買ったら同じ量が半額くらいで買えます・・・)

早速、変ったえさを与えてみたら・・・

なんと、キジ白のほうが、涙を浮かべながらご飯を食べているではないですか・・・

「おらあ、こんなうめえ飯初めてだぁ~」といわんばかりの号泣っぷり。本当に大粒の涙が落ちるほどだったのです。

これは奴隷飼い主冥利につきるなあ、と私も若干涙しそうになりましたが、以前猫が結膜炎になったとき、猫の涙は何か病気の兆しかもしれないと聞きたことを思い出しました。

早速ネットで「猫 餌 涙」で検索。すると・・・


  1. 餌を咀嚼する時だけ鼻涙管が詰まりやすくなり、涙が出ることがある。食事の時だけ涙を流す場合は鼻涙管の詰まりの可能性も。
  2. 餌の細かいゴミが目に入ったという可能性
  3. 歯の影響も有り、特に上あごの根元が悪くなると、目にも影響。餌を咀嚼する時に目に近い歯の根元が刺激されるので涙が出る。
こんな感じの原因があるそうです。

2だったら、餌を変える以前から涙が出ていそうですし、3なんてぶっちゃけ1歳未満の猫で起こることなのかとも思います。

となると考えられる可能性は1。
実際、ぶちと比べると気持ち鼻声かな?と思うことがあると、同棲相手も気にしていました。そして鼻声=風邪なのでは・・・?(しかし餌で号泣する以外はいたって普通)

越してきて初めて、近所の病院に行くことになったキジ白・・・
「はい、わかりましたあ~」といわんばかりの無気力加減で、同棲相手に連れられていきました(強風の中、4.5kgの猫を運んでいった相手には頭が下がります・・・こういう時10~19時勤務は面倒・・・)

そして不安な気持ちので受けた診察の結果は、


















「・・・しいて言えば個性ですね」


















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お医者さんいわく、猫の個体差によって、餌を食べることによって副交感神経?が刺激され、涙が出る猫もいるとのこと。

実際病気の類は見つからず、目薬を処方してもいいけど、自分だったら猫のストレスも考慮して、目薬は点さないです。とまでおっしゃっていたそうです。(因みに病院の評価はとても高い)

結局診察代(1080円)だけ払って、1人と1匹は強風の中帰宅してきました・・・



あと全然関係ないのですが、またしても病院に連れて行かれているのに、お医者さんに懐くキジ白・・・
キャリーから出す前から、「このコ、人懐っこいですね・・・」と驚かれる始末でした。どんだけだよ。

そんなキジ白は、最近私の私物を強奪することに悦を感じているようです・・・
ダウンジャケット(3万)、リュック(2万)、ダイニング用の椅子に敷いた座布団(750円)、枕(不明)などなど・・・


食事中に少し席を立った結果

私が椅子に座って飯を食べているのに、わずかに開いた隙間に強引に入ってきてはzzz・・・。布団に入ると、ずかずかと枕に乗ってくるので、常に毛が顔面に当たっています。なんならこの状態で入念な毛づくろいがスタートし、間接の硬い部分がゴリゴリ当たります。あと臭いの、口の中

そのくせ普段べったりなのは同棲相手という・・・




















これぞ奴隷冥利か・・・😍😍😍😍😍😍😍😍😍😍😍

2018年3月5日月曜日

ミヒャエル・ハネケ新作『ハッピーエンド』を見て、ハッピーになっちゃおう!



そんな風になるはずもなく・・・

新作『ハッピーエンド』で、ハネケ監督は「とにかく不快な作品を作った」とカンヌでコメントしていたそうです。

そして新作はタイトル詐欺なのか否かに関しては本当に解釈が分かれる終わり方でした。(以下ネタバレ)




























































長期的に見てハッピーエンドかも?




私は、長い目で見ればハッピーエンドなのかもしれないと考えました。

というのも、おじいちゃんのジョルジュは死にたがりにも拘らず、結局ラストで海に車椅子ごと沈もうとするところを、ジョルジュの子供であるトマとアンヌに見つかってしまいます。

こうやって見ると、ジョルジュにとってはバッドエンドなのは確かです。
しかし、今回はエヴがその様子を動画に収めていることから、もう家族は父親が死にたがっているということに目を背けることができなくなります。

中盤、夜中に屋敷を抜けだし、自動車事故で死のうとしたにも拘らず、家族はその結果に目を瞑って、誕生日パーティーなんて開いてます。

これを気に、家族がジョルジュの本心に目を向けてくれるのでは。という期待をこめての解釈というか、希望的観測というか・・・



増村保造監督の『痴人の愛』で、明らかにパッと見すごく異常なのに、主人公(大楠道代に馬乗りされてる)が「やっと本当の夫婦になれた・・・!」と感極まっているシーンがあるのですが、ある意味『ハッピーエンド』はあのラストを迎えて「やっと本当の家族になれた・・・!」と言える日が来るのではないかと思える、前向きなラストだと考えることにしました。


監督の十八番演出は炸裂したか?




そんなことより、前回のブログで書いた、ハネケ監督十八番の演出「平手打ち」と「失禁」ですが、『ハッピーエンド』ではなんと両方とも使われていないのです!

むしろ平手打ちどころか、ピエールが何の理由か観客には明らかにならないまま、男にフルボッコされたり、
ピエールがトチ狂って、母アンヌの婚約パーティーに移民の男性を数人連れてきて、怒ったアンヌに指をへし折られたりと、それくらいですね。
ピエールだけ終始可哀想な目に合う演出多数でした・・・

もう一方の失禁演出ですが、こちらは奥さんに「お前こんだけ役者にションベン漏らさせてんだぞ」と明確な数字まで出され、それを機に演出を控えたそうです。

しかし、その溢れる尿への熱意を抑えることができなかったのか、エヴの父、トマが不倫関係にある女性との小便をかける変態プレイの内容を字で説明してきます。
もう是が非でもぶっかけたいっ!!!といわんばかりの演出過多にこちらの膀胱も破裂寸前。

なんなら、ジョルジュが男性に物騒な依頼をしたときも「怯えて小便は漏らさんでくれよ」と男性に言ったとき、図らずしも私は男性の股間をまじまじと見てしまいました・・・失禁演出の復活をわずかながらでも期待した私は、まんまとハネケ監督の映画術にはめられたのです・・・流石です・・・パルムドール2冠はダデじゃねぇ。



結論



たぶん監督は、ピエールがあんまり好きじゃない。でもおしっこは好き。