2018年4月3日火曜日

映画館スタッフが行う映写業務とは?

先日twitterでもつぶやいたのですが、映画ファンの人って、劇場の裏側とか気になるのかなあ~と、最近ふと思うようになりました。

かくいう私も2年ほどスクリーンが3つしかない単館とシネコンの間のような映画館で、館内装飾や上映する作品の宣伝、映写業務などをフリーターで行っていました。

そういやシネコンから私が勤めていた映画館に勤めることになった人が、「シネコンなら社員がやるような業務を、ここではバイトがやっているんですね・・・」と若干引き気味でした。
それだけ私が働いた映画館は特殊なケースかもしれませんが、興味をもっていただければ幸いです(なんなら私はシネコンの業務内容を知りたい・・・

今回は皆大好き、映写業務について書いてみようと思います。

  • 作品は基本佐川で届きました
今ではほぼ全ての作品がDCPというデータでやり取りされており、配給会社から公開がある程度近づくと、HDDに作品のデータが入った状態で、佐川さんで届けられます。

そのHDDも、配給の規模に比例して、専用の付属カートリッジのようなものをつけないと、映写機にデータを転送できないものから、
ヨドバシカメラとかに売ってそうな、非常にシンプルなポータブル式のHDDで送られてくることもあります。


  • どうやって映写機で作品を再生するのか

映写機への転送方法は、まるでPCに取り込むがごとく、USBケーブルに繋いで、映写機側から操作し転送するだけ。
正直ちょっとPC触れる人なら誰でもデータのやり取りができるくらい簡単です。
ただ配給によっては後日送られてくるKDMというデータを同時に入れないと、再生ができないセキュリティが施されている場合があります。

これはセキュリティ上とても有効ですが、後ほど説明する試写業務にギリ支障をきたす場合があります。


  • データに問題がないかチェック
試写とは別に、取り急ぎ画像や字幕に乱れがないか、流し読みのような感じでサクッとチェックします。
意外と字幕系は問題が起きることがあり、後ほど字幕のデータだけ配給から送られてくるようなこともあります。

私はチャプター飛ばしのような感覚でチェックをするのですが、気になる作品の場合、一発でネタバレに直撃する、大変危険を伴う作業です。
私はこれで『消えた声が、その名を呼ぶ』の結末を知ってしまいました。無念なり。


  • 予告編成をする。
このあたりからシネコンとは違いが出てくる気がします。
いかんせん、私が勤めた映画館はバイトが予告を編成し、それを社員がチェックするという自由度がわりと高いものでした。

上映する作品の作風、客層、アカデミー受賞作なら、同じくアカデミーがらみの作品etc
時々アニメ作品を上映するときは、他にアニメの上映待機作がないこともあって、苦肉の策で『ピエロがお前を嘲笑う』の予告とか入れていました・・・

この作業は映画好きほど腕がなるものですが、自分の感覚に懲りすぎて、客層を無視すると怒られます・・・

エクセルで出力された表を印刷し、そこに手書きで予告を編成していきました。
その表を元に、映写機で予告を並べていきます。


  • 予告はPCでダウンロードするときも
予告編に関しては、USBメモリで封筒には行って送られてきたり、予告編ダウンロードサイトが業者用に存在してるため、そこからダウンロードすることも有ります。

ちなみに予告の上映方法は、映写機でスケジュールなるものを作成し、設定したタイムテーブルにあわせて随時上映されるように編集します。

このスケジュールを少しでもミスすると、全ての上映時間に影響を及ぼしたり、他の機械の動作に支障をきたしたりと、怒られる程度ではすまない、始末書レベルの処置が待っています。
映写は責任重大です。そんなことバイトにやらせるなよと言えばそれまでですが、単館映画はこうした切り詰めた企業努力から成り立っているのかもしれません・・・(自画自賛)
私はこのスケジュール設定をミスり、普段滅多に怒らない穏やかな先輩に、しこたま怒られました。無念なり。

ちなみに予告編はあの短い時間でいくつかのパートで別れており、基本的に(「アカデミー受賞!のような文言」)「予告」「公開日」「前売り情報」「公開劇場」などに別れています。
劇場に応じて使用したりしなかったりするパートもあります。
「公開劇場」に関しては東京の映画館の名前しか入っていないケースもあるので、その場合はこの部分だけ使わず、劇場で用意している「当劇場にて公開」のようなパートに差し替えます。
この作業が地味な上に、データの表記名ではパッと見分からないことがあるので、確認が面倒だったり・・・


  • 皆大好き試写業務
このために映写業務になったと行っても過言ではない、試写業務。
本来の目的は映画を試写し、上映時の注意点(銃声とか爆発音が以上に大きいので、音量設定は注意するとか)をスタッフ間で共有することを目的としたり、私は宣伝業務も行っていたので、映画を見たことでかける紹介文なんかもあります。ブログにあげたりもしてました。

しかし本音を言えば、大きいスクリーンを貸しきって、一人ふんぞり返ってみる映画が最高という点です。
これができれば安い自給(820円スタート)も気になりません。

試写のタイミングは閉館後か開館前。
私は遅番の日に映画館に泊まって、試写をすることもありました。
一人ぼっちなので、泊り込みは大変な恐怖ゆえ、事務所の明かり全付けで寝てました。
一番の試写の思い出は、下戸なのにお酒のドキュメンタリーを見て寝落ちしているところを、先の穏やかな先輩に目撃されたことです。


因みに映写担当は4,5人いるので、見たい作品は先輩から順に決めていきます。
当時ペーペーだった私は、コーヒーのドキュメンタリーを見たり、後期高齢者がヒップホップに挑戦するドキュメンタリーを見ていました。

見たい作品は大体先輩が見ることが多いので、先輩の試写のコメントを読んでは歯がゆい思いをしていました。

(シネコンはもっと厳重に試写管理を行うそうですが、うちは結構ラフでした。


  • いよいよ上映初日
作品がいよいよ上映されると、初日は映写は穏やかではいられません。
ちゃんと映像に問題はなかったか、スケジュールやタイムテーブルは正確に組まれたか、予告編成に間違いはなかったか。
2度、3度のチェックをしても、やはり完全には安心できません。

さらにうちの映画館は、スクリーンの幕を手動で設定しないといけないスクリーンがあり、これを怠ると、ビスタの映像なのに、幕がシネスコ状態になってしまい、上下部分に幕が現れ、そこに映像が投射されてしまうという悲劇が起こります。

シネコンは結構ヴィスタの幕のまま、シネスコ流したりしているので、楽でいいなあと羨ましい気持ちでいっぱいでした。


  • 上映が終わると・・・
上映が終わるというか、基本試写や映像チェックが終わると、DCPは速やかに別の劇場へ転送します。

基本1つから複数のDCPを上映スケジュールに合わせて劇場から劇場へと、いわば又貸し状態でやり取りされます。
そのまま配給に返すパターンも。

転送すると、その際使用した配送業者の伝票を、配給にファックスで送ってひとまず終了です。

データはずっと映写機に入れていても、容量が足りなくなってしまうので、すぐに消したいところですが、場合によって公開延長したり、リバイバルしたりするので、安易に消すことは常に躊躇われます・・・(ただ、配給に事情を説明すれば、普通に再度DCPを送ってくれます・・・)



映写業務は基本、この繰り返しです。
馴れてしまえば作業自体は楽ですが、責任重大であることは変わりないです。
シネコンなんて作品数も多いから、もっと大変なのかな・・・

新年度、私のように大学出たけど職が無ぇ!なんて人は少しでも何かしら参考になれば・・・

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