2018年3月14日水曜日

Netflix『アナイアレイション 全滅領域』を原作と比較してみる



3月12日からNetflixで配信された『アナイアレイション 全滅領域』
もともとは劇場公開が予定されていたものの、監督とプロデューサーの結末に対する意見がかみ合わず、パラマウント映画なのに劇場公開が中国と北米だけになったという異色?作・・・

個人的にはアレックス・ガーランド監督の前作『エクス・マキナ』が凄い辺鄙なところのシネコンでしか上映してくれなかったので、そんな風にまたなるくらいなら、その他の国は配信対応というのはある意味神対応だと思っています・・・

基本我慢が大の苦手な私は、劇場公開が決まる(決まってはないか・・・)前から原作小説を張り切って三部作全部読んだのですが、映画の脚本が上がった時はまだ1部の『全滅領域』しか出版されていなかったそうで、映画はこれで完結だそうです。私の努力とは。

そんなわけでやはり原作とはいろいろ設定とか結末が異なっているので、簡単にまとめてみました。

以下映画、原作共にネタバレありです。
















因みに原作では浮気してません。

  • 原作では、ラストがはっきりしている。
映画ではレナの夫・ケインの一言「きみはレナか?」という発言を気に、観客は一気にレナがオリジナルなのか、目の前にいるケインのようにコピーなのか分からなくなり、そのまま映画は終わります。

一方の原作では、レナ(正確には原作は固有名詞がなく、生物学者とだけ表記されます)は<エリアX>に入ってわりと早い段階で、体内に「煌き」なるもの(おそらく映画で言う「シマー」は個々から来ている?)を取り込み、調査の過程で自分の体に異変が起きていくのを実感します。

最終的にレナは、映画だと玉虫色のエイリアンと対峙しますが、原作では彼女もケイン同様コピーが生まれ、オリジナルのほうはというと、映画で言うクマのようなクリーチャーとなって、続編で<エリアX>に戻ったコピー・レナと対峙します。
<エリアX>内では、オリジナルは異形の存在に変化させられ、コピーが生まれます。


(「たす・・・けて・・・」)
  • クマ=シェパード
ということは、あのクマのクリーチャーが、なぜ襲ったシェパードの声で「たすけて」と鳴いたのかというと、レナが見つけた遺体はシェパードのクローンという風に考えることもできます。

実際あんな凶暴なクリーチャーに襲われたらもっとズタズタになってもおかしくないのに、見つかったシェパードは鼻から青汁みたいなものを出しているだけ・・・

しかし今作では、原作ほどオリジナルが異形の存在になることを示唆していないので、
突然ふらふらとどっか行ったラデクが言うプリズム現象?によって、彼女の意識がクマに宿った可能性もあります。(でもそうなると、過去の調査隊が残した、腸?の動く隊員の説明がつかなくなる気も・・・)

なお原作では人の目をしたイルカが登場するなど、ちょっとあからさまな奴もちらほら登場します。


(まだ色々情報が明らかになる前のメインビジュアル。よく見たらサブキャラ・・・)
  • 原作だと、むしろヴェントレスの過去のほうが明らかになる。
しかしそれは第3部の「世界受容」から。映画版で明らかにするのは不可能です。
そんなヴェントレスは、映画にも登場する灯台。その灯台主と幼い頃接していたという過去があります。
映画に登場する灯台は、昔怪しい連中が弄繰りまわして、灯台主が異形のものに変形したかのような結末を迎えます。
そんな過去を持っていたゆえ、ヴェントレスは「サザーン・リーチ」の局長として就任したのです。

因みに原作では(たぶん)コピーのヴェントレスが、<エリアX>の境界を広げながら「サザーン・リーチ」にやってくるという、はた迷惑なことをしでかします。(つまり映画のようにレナが帰還したからと行って、<エリアX>は消滅しない)


(「たす・・・けて・・・」)
  • <エリアX>の発生原因
原作も映画も灯台を元に発生している点は同じですが、映画は隕石の落下。原作は続編で、灯台主の目を盗んで怪しい連中が、光源に何か細工をしているのが明らかになります。
その連中もどこかエイリアンっぽい描写があるのですが、彼らがどうやって地球に来たかは不明です・・・

あとは設定とか、細かい点をあげるとキリがないのですが、レナの元軍人は映画オリジナルだし、原作ではレナが調査隊に化せられた日誌をつけており、その日誌=小説「全滅領域」と言った体だったり、その日誌が一体過去にどれだけの調査隊が派遣されたんだ・・・と言いたくなるようなほど大量に<エリアX>内で見つかったり・・・etc

(ださい)

個人的には終わり方が『エクス・マキナ』っぽくて好きでした。
もしレナがクローン(エイリアン)だとしたら、つがいができたわけですから、そりゃ<エリアX>なんてもういらないよね・・・と考えるとゾッとします。

こう見終わってからジワジワとくる感じもたまりません・・・ぐわーっと絶望感が押し寄せてくるワケではなく、ひたひたと漬け置きされる感じと言いますか・・・

正直映画と原作は大まかなストーリー以外かなり別物のようになっているので、ぶっちゃけ第1部だけ読んでもいいような気がしてきました・・・第2部とかヴェントレスの代わりに来た冴えない局長の話だし・・・




しかしこの映画を見た後に、ナタリー・ポートマンが出演しているディオールの香水のCM見ると一段とシュール。私も証明して欲しい(いろんな意味で)。

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